第22話 こたるさん事件簿
それは去年の春くらい。
こたるの歯磨きをしていたら 左上奥歯の歯茎がつるっと綺麗に盛り上がっていた。
出血もないし、イビツな感じでもない。
歯石もかなり溜まっているから、ただの歯肉炎だろうと思っていた。
移住準備やらで忙しい時期に突入したせいもあり静岡に移住して落ち着いたら、ホームドクターを探して そこで麻酔かけてガッツリ歯石をとってもらおうと決めていた。
その後も歯磨きのたびに患部を観察していたけど 全く変化がないので 自分の中ではすっかり歯肉炎と決めつけていた。
そして今年4月。
フードを購入した際に貰った小型犬用の歯磨きガムをこたるにあげた。
一生懸命噛むこたる。
そのうちに口から出血してきたので 口の中を見ると腫れている所とは全然別のところからの出血だった。
でも ふと思った。
「もう病院を探して 歯石取ってもらおうっと」
そんな軽い気持ちで。
大型犬の症例をいっぱい経験してる癌の認定医が院長をしている病院が近所にあったので お世話になることに決めた。
院長先生は要予約診察だったので 今回は腫瘍でもないし、他の先生で大丈夫!ということで気軽に来院。
結果 歯肉炎かな?となり 暫く抗生剤を飲まされたが 全く腫れが引かない。レントゲンを撮っても腫瘍像というよりは炎症?という感じであるということもあり。取り敢えず歯石を取ってしまおうとなった。どうせ麻酔をするならってことで患部のニードルバイオプシーを行なってもらうことにした。
その病理検査結果は簡略化すると
「炎症はない。悪性細胞はない。でも増殖像もある。高分化型線維肉腫の可能性がある。もっと多く組織がないと診断できない」との事だった。
この時点で主治医が院長先生に自動的に変わった(笑)もし高分化型線維肉腫だとしたら
かなり難しい症例であるということで。。。
そして CTをとって更に大きく組織を取るべく速攻検査入院。
モジモジして結果を待つも。。。。
病理検査結果は ニードルバイオプシーの結果と同じ結果だった。
CT画像では腫瘍らしいものが 左上奥歯から眼球下まで広がり 眼球を圧迫しているという事だった。とはいえ画像上は 明らかな悪性像という感じでもない。
確定診断が出ないこともあり摘出手術はとても悩んだ。
取り敢えず 念のためステロイドで様子を見ることにした。
しかし投薬続けて1週間後でも変化はなし。
このまま様子みて時間だけが過ぎても。。と思い、こたるの状況と腫瘍摘出手術を先生に相談。
「良性だろうが悪性だろうが眼球圧迫して来ているので このままいけば眼球突出するか視神経まで行ってしまう。そういった状況である時点で病理で良性であっても臨床的には十分悪性である。眼球温存することを優先するなら 今のうちに腫瘍らしきものを摘出した方がいい」
ということで またまた即入院。
もちろん摘出したブツは、また病理検査出して結果待ち。
手術の結果は、思った以上の腫瘍の広がりと局所浸潤で全て取り切ることは不可能だったそう。
骨 を溶かし、筋層にまで浸潤し末梢神経や血管を多く巻き込んでいたとのこと。
この時点で「ああ 確実に悪性だな」と思った。
病理検査結果は以前より早く報告がきて
「高分化型線維肉腫」確定となった。
この腫瘍は臨床的には悪性ありながら 病理的には極めて正常(良性)っぽい細胞像を示す。
症例としてはかなり少なくて、その中でも犬種では圧倒的にゴールデンレトリバーに多い癌だとのこと。
通常の抗ガン剤は効かない。
放射線も微妙。
根治は外科的完全切除のみ。
手術前検査で軽度の腎不全が判明してるし
患部の場所も場所だし。。。。
まして腫瘍切除手術で麻酔からなかなか覚めなかったらしく 繰り返しの全身麻酔を必要とする治療は効果が確実なものでなければ危険なだけ。
ということで とあるお薬に希望を託し 頑張ってみることになって 現在に至るのでした。
パラボラこたるは腫瘍をとったら 術前より絶好調。
眼球圧迫してたり神経巻き込んでたりで 鈍痛がずーーーっとあったのかもしれないなって思う。今はとても快適そう。
ごめんね。こたる。。。
ちょっとオカルトなこたるです。